B
大理石の階段のうえには支配人フリュウリ氏が出迎えていた。彼は手を揉《も》み首を曲げて習慣的に笑った。が、彼の頭脳は私たちの「状態《ナンバア》」と所属級を把握《サマップ》し、一刻も早く待遇の等別を確立しようと忙がしく働いていた。私は彼にファシスト風の真直ぐに腕を上げる挨拶をして、まず私たちがいかに方々を旅行して来た場慣れ者であるかを示した。それに対して彼は帝政時代の仏蘭西《フランス》外交官のように片手を胸に当てておじぎをする礼を返した。それは古風に優雅なものだった。そして彼は私たちのために特に部屋の用意が出来ていると言った。But then, この M.Fleury は巴里《パリー》リッツ・ホテルの支配人レイ氏、オテル・ロワヤル・オスマンのメラ氏、エドワアド七世ホテルのプラロン氏、オテル・ジョルジェのタレイル氏とともに大陸ホテル経営の五人男であることを私は以前から知っていた。
5
専売皮の靴のさきで星がギタノの舞踏を踊っていた。カスタネットはモナコの夜の海岸が鳴らしていたのだ。オテル・ドュ・パリとCASINOのあいだに、食卓布のように明るい灯火の小川と人々の笑い声が
前へ
次へ
全66ページ中38ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
谷 譲次 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング