ノ私達の Make−up に欠除しているというのだ?
『あ! どっかから犬を借りてくりゃ宜《よ》かった!』
 私が叫んだ。彼女は非常に悲しそうな顔をした。
『犬? そうね。ペキニイスか何か――でも、もう遅いわ。駄目よ。いまになってそんなこと言っちゃあ――。』
 私は、私たちの完全さに汚点をつけないために、犬のことはこれきり考えないことに決めた。そしてそう彼女に約束した。
 コンダミンの小湾が私達を呑もうとして断崖の下に待ち構えていた。
 ランチャは、それがランチャであるところの、すこしも速力をゆるめることなしにその難所を突破してコンダミンの湾を失望させた。
 私たちのホテル入りは so far 美々《びび》しい成功だった。最初の美少年は彼女の帽子箱を、第二の美少年が彼女の化粧鞄を、第三の美少年は彼女のステッキを、第四の美少年は第一のスウツ・ケエスを、第五の美少年が第二のスウツ・ケエスを、第六の美少年は――とにかく第十一の美少年が私の眼鏡のサックを捧げて続くまで、じつに十一人のボウイが私達の背後《うしろ》に行列した。そのあいだ忠実な19は車扉《ドア》のそばに直立して帽子を脱《と》っていた
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