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が、それとは関係なしに、ルウマニアでは汽車が雪の下に寝ころんで、旅客は工兵隊が風俗博物館から応急に借用して来て雪中に立てた亜刺比亜煙管《アラビアパイプ》を通して外部の家族と会話していた。
ウィインでは大型輸送自動車の陸軍飯場《キャンティン》が街上に出張して、通行人と好奇《ものずき》な外国人の旅行者に羊の脂肪肉と麺麭《パン》屑と上官の命令とを煮込んだ熱湯汁を無料分配していた。百貨店帰りの若い売子女の飲んだあとからは、兵卒達が口紅を舐《な》め取るために先を争った。ダニウブが六|呎《フィート》の厚さに氷結して子供たちはみんなスケイトに行ったのでブカレストの学校は自然に閉鎖された。
独逸《ドイツ》では、スプリイ河と魚類の意識が凍って、浮浪人はその無機物化した魚を発掘して来ては湯桶《バス・タブ》に放して蘇生させて売っていた。伯林《ベルリン》ではすべての市街自動車のエンジンを一晩じゅう動かしておくことによって夜中に発動機油の氷結するのを防がなければならなかった。
マンチェスタアではフィルズ製鉄会社の地下室蒸気釜が、氷ってたところへ急に加熱したので破裂して三人の職工が釜と一しょに即死した
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