、にモンテの官能を刺戟していた。
 私たちも礼服へ jump in して。私達も談笑の急流を渉《わた》った。香気のために私は毎朝オウ・ド・コロンを飲んで、頭髪にはゴミナ・アルジェンテンの固化油《オイル》を使用した。妻は英吉利《イギリス》直輸入の婦人煙草「|仕合せな夢《ラッキイ・ドリイム》」を喫《ふ》かしつづけた。そして爪を三角に切って貝細工の光沢を模倣するのに午前いっぱいかかった。

     4

 私達はマルセイユ発ヴァンテミイユ行きのP・L・M列車をアンティブで見捨てたのだった。
 そのとき一七八八年以来の記録にない氷の風が北極から露西亜《ロシア》と波蘭土《ポーランド》の野原を吹き抜けて欧羅巴《ヨーロッパ》の主要部分の都会の記念塔とアパルトマンの窓枠とを痛そうに揺すぶっていた。
 KEWの役人が両手を空中に抛り上げて宣言した。ファロ列島の東部に精力を持つ高気圧がある。この北極風が労農共和国の氷原を撫でて来るために現在の寒さであると。つまり、すべての社会的妨害がそうであるように、この天候の場合も原困は狂的露西亜《クレイジーロシア》の世界呪文の有難くない反応であると彼らは言いたいのだ
前へ 次へ
全66ページ中27ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
谷 譲次 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング