ッはじめる。だから中途で二度も三度も立って、ぽけっと[#「ぽけっと」に傍点]の底を集めたので新しい札《テップ》を買いに来たり、なかには、飛び出してって波止場附近の酒場に友達の顔をさがしたり、船へ帰って金を工面して来たりするから、何度でもそれらに、金と交換に賭け札を渡していると、一夜の入金にしたところで、時としてなかなか大きくなる。テレサのことなんか忘れて、ばくち[#「ばくち」に傍点]そのものへせっせ[#「せっせ」に傍点]と注《つ》ぎ込む人間が、マルガリイダには何よりも有難いのだ。こうして船員の金はお婆さんへ移り、よそへ持って行っては価値のない木札《テップ》だけが、男から男へ取引きされてるうちに、単純なかるたげいむ[#「かるたげいむ」に傍点]だから興亡は転々として、やがて決勝時に近づく。五時だ。この五時になると、景気のいいものも落ち目のやつも一せいに手を停《や》めて、各自持ち札の総計《トウタル》をとらなければならない。赤一枚を五十エスクウドにかぞえ、白が三十、黒が十のこと札《テップ》面のとおりだ。で、全部の部屋の全部のテエブルを通じて、Aが七百八十二エスクウドで最高位、四百十七のBが次点
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