ュいをせびりに出市していた。が、なぜこう、売春婦という売春婦が、売春婦になると同時にふらんす女――ことに巴里《パリー》から流れてきた――をもって自任し出すんだろう? 眼の黒い女・碧《あお》い女・茶いろの女・髪の毛の黒い女・それほど黒くない女・むしろ赤ちゃけた女――要するにすべての女が、すこしでも外国めいた点地《タッチ》があると人工的にそこを強調し、どう探しても無いやつ[#「やつ」に傍点]は無理にも作って――自由な自国語を商売のときだけ御丁寧に不自由らしく片ことで話したりなど――どれもこれも、先天的器用さをもって仏蘭西《フランス》うまれに化けすましてしまう。だから、ふらんす以外の土地で、売春婦というと、片っぱしから自称ふらんす女・巴里おんなにきまってる。近いためしが、このりすぼあ[#「りすぼあ」に傍点]のバイロ・アルトだけでも、テレサを筆頭に、何と多くの葡萄牙《ポルトガル》の女が、チェッコ・スロヴァキアの女が、波蘭土《ポーランド》の女が、ぶるがりあの女が、揃いもそろって仏蘭西生れ、巴里うまれであったことよ! この売春婦の非公式ふらんす帰化の心理には、いくぶんそこに、じぶんの行為によって自
前へ
次へ
全79ページ中54ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
谷 譲次 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング