蕪kが、それぞれ何と夥《おびただ》しい金銀・香料・海陸の物産を貢《みつ》ぎものに捧げて、このテイジョの河口をはいって来たことだろう! 大理石の膚《はだ》の各国女奴隷・その売買所と仲買人の椰子《やし》の鞭《むち》・宗教裁判と火刑広場の野次馬・海賊|来《きたる》の銅鑼《どら》と吊橋の轆轤《ろくろ》を捲く大男の筋肉――そして今は、不潔と無智と猥雑と、海犬《シイ・ドッグス》の群と考古学的価値のほか何一つ近代文明への関点を有《も》たないりすぼあ[#「りすぼあ」に傍点]!
 世界の隅っこに、これほど地球の進展から隔離された塵埃《じんあい》棄て場が現存し得ようとは、たしかに何人《なんぴと》も想像しない一驚異であろう! その雑然たる廃頽《はいたい》詩と、その貧窮への無神経と、その戦慄すべき alien banality と――。
 SHIP・AHOY!
 こうして改めてあたりを見廻しながら、その晩も僕は波止場附近に張りこんでいた。何か turn up するのを待つこころで。
 真夜中だった。暗いなかに急に人影がざわざわ[#「ざわざわ」に傍点]して、一団の女がしずかに桟橋を下りて行った。桟橋の端には、物
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