ェガルシア・モレノ号を手がけようとして――一つの暗転。
SHIP・AHOY!
|血だらけな晩め《デ・ブラッディ・ノウイト》! God damn it!
船尾の綱板梯子《ジャコブス・ラダア》に揺られてる僕の眼は、すぐ鼻っ先の大きな羅馬《ローマ》字を綴ってた。この船にはアマゾンのにおいがする。船名、がるしあ・もれの号。船籍、ブエノス・アイレスと白ぺいんとが赤錆《あかさび》で消えかかって、足の下の吃水線《きっすいせん》には、南あめりかからくっ[#「くっ」に傍点]附いて来た紫の海草が星と一しょに動いていた。
火夫の油服《あぶらふく》に、真黒なタオルで頭を結んだ僕だ。この、紙に革を張ったすうつけいす[#「すうつけいす」に傍点]は「しっぷ・ちゃん」の商品を満腹して黒人の頭蓋のように重かった。片手にその鞄――手が切れそうに痛い――をぶら下げて、ほかの手で縄梯子《ジャコップ》を掴んで攀《よ》じ登るのだから、ビスケイ湾の貨物船みたいに身体《からだ》が傾いて、ジャコップが足に絡んで、それを蹴《け》ほどいて一歩々々踏み上るのが骨《ハード》だった。梯子《はしご》と僕と鞄が、すっかり仲よく船尾《スタアン
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