シ物「闘牛行《アウロス・トウロス》」と言う――が Calle de Alcala の町幅を埋《うず》めて、その絵画的な色彩、南国的な集団精神、これほど「失われたる前世紀の挿絵をいまに見せる」お祭り情緒はまたとあるまい。市に地下鉄が出来てから、この「闘牛場へいそぐ人の河」なる古儀に幾分気分を殺《そ》ぐものがあるとは言え、それでもまだ、この日、支那青《チャイナ・ブルウ》の空に火のかたまりの太陽が燃える限り、そしてすぺいん[#「すぺいん」に傍点]に闘牛という「聖なる殺戮《さつりく》」があとを絶たないあいだ、|過ぎし日《バイ・ゴン・デイス》を盲愛するこの国の人々は、銘々がめいめいの魂の全部をあげて、昔からその闘牛の序曲のように習慣づけられているこの市民的古式の行列「闘牛行《アウロス・トウロス》」に、それぞれ派手な役目を持とうとするであろう。
闘牛行《アウロス・トウロス》は、闘牛のある日、市の中央の広場「|太陽の門《ポエルタ・デル・ソル》」から闘牛場《ア・ラ・プラサ》へいたる途中、アルカラの町筋に切れ目もなくつづく見物人の行列のことを修辞化したもので、郷土的な、そして歴史的に有名な、西班牙《ス
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