リヨ氏――現在ここであばれてる牛の名――を出したヴェラガ公爵の闘牛場《ガナデリア》と、もう一つセニョオラ・MIURAのガナデリアと、このふたつとも南のアンダルシア地方にある。一たい闘牛士も闘牛《トウロス》も、多くこのアンダルシアから産出して、そうでないと本格でないほどに思われてるんだが、これは、ドン・ホルヘの察するところ、該方面には、人にも牛にも比較的多分にあらびや[#「あらびや」に傍点]人の好戦的血統が残留してるためだろう。
この闘牛《トウロス》をいよいよ最後の運命地、市内の闘牛場へ運び入れるのがまた大変なさわぎだ。どこまでも猛獣という観念を尊重し、巌畳《がんじょう》な檻《おり》へ入れて特別仕立ての貨車で輸送する。停車場から闘牛場まではなおさら、法律によって、檻のまんまでなければ決して運んでならないことに規定されてる。だから、単に積んだ鉄檻の猛牛に送牛人《カベストロ》と称する専門家が附いてえんさえんさ[#「えんさえんさ」に傍点]と都大路を練ってくところは大した見物《みもの》だ。さあ、これが今度の闘牛《トウロス》の牛だとあって、はじめから切符を諦めてる貧民連中なんか、せめては勇壮なる
前へ
次へ
全67ページ中44ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
谷 譲次 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング