ィのようなイベリヤ半島の烈日に熔《と》けて爆発している――AA! 闘牛日のMADRID!
 欧羅巴《ヨーロッパ》はピラネエ山脈に終り、あふりかはピラネエ山脈にはじまることの、西班牙《スペイン》は「白い大陸」と、「黒い大陸」の鎖だことの、やれ、ムウア人の黒い皮袋へ盛られた白葡萄酒の甘美《うま》さよ! だの、そうかと思うと、西の土に落ちて育って花が咲いて果《み》を結んだ東の種だことのと、古来いろんな人に色んなことを言われて来ているこのESPANA――黒髪の女と橄欖《オリーブ》色の皮肌《ひふ》、翻える視線と棕櫚《しゅろ》の並木、あらびや風の刳門《アウチ》と白壁の列、ゆるく起伏する赤石の鋪道と、いま市民のひとりのようにその上を闊歩してるセニョオル・ドン・ホルヘ・タニイ――べら棒に長ったらしいが、私だって、西班牙《スペイン》へ来れば、George がホルヘ[#「ホルヘ」に傍点]と読まれてそのうえに Senor Don の敬称ぐらい附こうというものだ――そこでその、ドン・ホルヘの聴覚へ晩秋の熱風は先刻の「海賊の唄《コルサリアス》」を送りこみ、風にSI・SIとしきりに hissing sounds 
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