ノは赤い敷石が焼けて、私の感覚も、「すぺいん」を吸収して今にも引火しそうだ。
太陽・紺碧――闘牛日!
歌って来る一団の青年。
声が街上の私を包囲する。
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亜弗利加《アフリカ》の陣営で
ある西班牙《スペイン》兵士の唄える――。
南方へレス産の黄|葡萄酒《ぶどうしゅ》、
北方リオハ産の赤葡萄酒。
この赤とこの黄と。
われらが祖国いすぱにあの国旗!
[#ここで字下げ終わり]
――なんかと、国旗の色をぶどう[#「ぶどう」に傍点]酒で識別して悦《よろこ》んでる。が、じつを言うと、西班牙《スペイン》の国旗は、鮮血を流して黄金を取りに行くという世にも正直な、そしてすぺいんらしい物騒な欲望を寓意して、そこで、赤と黄から出来上ってるのだ。しかし、それはそれとして、その赤葡萄酒と黄葡萄酒、鮮血と黄金の無数の旗が、きょう同国首府マドリッドの大通りにやたらにひらひら[#「ひらひら」に傍点]して、こうしてそこのアルカラ大街の雑沓に紛れ込んでるドン・ホルヘ―― Don George ――の耳に、「海賊の唄《コルサリアス》」と題するくだん[#「くだん」に傍点]のモロッコ従軍歌が、いま糖
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