Rue d'Albe の九番地下室である。
 第六「|劇場後の劇場《テアトル・アプレ・テアトル》」。
 這入ると直ぐ大きな字で書いてある。
 Vive L'amour ! ――恋ばんざい!
 Vive le bon Vin ! ――好《よ》い酒ばんざい!
 Vive la chanson ! ――唄ばんざい!
 Vive la danse ! ――ダンスばんざい!
 Vive L'amour ! ――恋ばんざい!
 ふっくらとした真赤な絨毯を敷き詰めた階段だ。先に立って降りながら、親分が言う。地下室とはいえ、あかるい電灯と金ぴかの装飾に化粧品みたいなにおいが漂って、ちょっと大ホテルの婦人室を思わせる。
『御覧のとおり、ここは今までのところと違いまして、ずっと高級であります。劇場後の劇場――名前が示しているとおりに、芝居が閉《は》ねてからの芝居でありまするが、つまり巴里《パリー》じゅうの有名な女優たちが、木戸を打ってから此家《ここ》へ集《あつま》りまして、特に皆さんのために珍しい舞踏をお眼にかけようというのであります。今夜はことに、名のある女優さんはほとんど全部来ておるはずですが、この連中
前へ 次へ
全68ページ中59ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
谷 譲次 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング