、した。大きにお世話だ!」となる。
 どこから傍道《わきみち》へ外《そ》れたのか忘れちまったから、再び「夜の酒場、暗いLA・TOTO」へ引っ返して出直すとして――で、つまりその、そこで私が精々ぱり[#「ぱり」に傍点]・ごろ[#「ごろ」に傍点]めかして独りで凄《すご》がっているところへ、突然この「港のわたり[#「わたり」に傍点]」をつけたやつ[#「やつ」に傍点]があるんだが、そんなに心得てるなら何もびっくり[#「びっくり」に傍点]することはないじゃないかと言うだろうけれど、私をどきん[#「どきん」に傍点]とさせたのは、その場所――誰だってこの深夜の巴里《パリー》サミシェルの「隠れたるラ・トト」でよもや[#「よもや」に傍点]日本語をぶつけられようとは思うまい――と、何よりもその声の主なる一人物の風体相貌とであった。
 と言ったところで、べつに異様ないでたち[#「いでたち」に傍点]をしていたわけじゃない。異様どころか、じろり[#「じろり」に傍点]と出来るだけ陰惨な一瞥をくれてこの「|やあ《アロウ》!」の出所を究明した私の眼に朦朧《もうろう》と――紫煙をとおして――うつったのは、何のへんてつ[
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