@    6

 第三の場処「夜の花園」――については、残念ながら何ら筆にすることが出来ない。ただ所在を記《しる》すだけにとどめておこう。広場《プラス》ダンフェル・ロウに近いルウ・デ・アウブルの一〇八番だ。
 第四の場処「狂画家の工房《アトリエ》」――これも困る。
 つぎは第五「人魚の家」―― 87, Rue de L'Orange。ノウトルダムのすぐそばである。これも、這入った時は何のへんてつ[#「へんてつ」に傍点]もない、相当の広さの普通の応接間だった。
 が、一同がその部屋へ案内されて、さて、これから何がはじまるんだろうといったふうに、多少要心するような態度で、きょときょと[#「きょときょと」に傍点]そこらを見廻していると、何らの予告なしに急に室内の電灯が消えて真暗になった。すると、どこかでざわざわ[#「ざわざわ」に傍点]と水の動く音がして、おや! と思ってるうちに、映写のようにぱっと真上から強烈な光りがさした。そして、敷物と言わず家具といわず人の肩と言わず、部屋全体に無数の影がゆらゆら[#「ゆらゆら」に傍点]と揺らめき出した。
 とこういうと、何か人為を超越した恐しい設備でも伏せ
前へ 次へ
全68ページ中49ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
谷 譲次 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング