A今夜のは特選ぞろいだと言いますから、まあ、私たちは幸福人ですよ。ははははは、これでどうやら国の悪友達にも土産《みやげ》話が出来ますからね。』
などとあちこち話しかけて歩くもんだから、それをきっかけ[#「きっかけ」に傍点]に一同いつの間にやら同じ上機嫌《グッド・ユウモア》に解け合って、何物をも辞しない探検家の精神《スピリット》が埃及尖塔《オベリスク》みたいに高く天に沖《ちゅう》していると――義士の勢揃い宜しくなこの騒ぎに、義士のことは知らないが何がはじまったのかとびっくりして、通行人が足をとめている。
折しもあれ――というほどのことでもないが――そこへ大殿堂《グラン・パレ》ET小殿堂《プチ・パレ》の方角から一台の遊覧用大型自動車《シャラパンク》が疾駆して来て、待ち兼ねたみんなを拾い上げたのである。探検隊長――まるでアムンぜンかノビレみたいだが――アンリ・アラキが、運転手と並んで腰かけていた。
午後九時四十五分。彼は、出発に際して隊員に一場の訓示を与えた。仏蘭西《フランス》大使のように流暢なふらんす語だった。
『出かける前に広告はしません。すぐに実物が証明するからです。またどこどこ
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