、やって朝から晩まで巴里《パリー》街上の風に吹かれるのが、いわばこれ私の運命なのだ。
運命だから仕方がない。だから、歩く。だから、凱旋門からAVEドュ・ワグラム、公園《パルク》モンソウからオペラ座、伊太利街《デジテリエン》から――ま、どこでもいいや。外国人――仏蘭西《フランス》人以外――のほう[#「ほう」に傍点]つき廻っていそうな通りを選んで、精々こっちも放《ほう》つきまわっているんだが、もっとも、そう言ったからって、ただ漠然とほう[#「ほう」に傍点]つき廻っているんじゃない。それどころか、実は――と、これは極く小さな声で言うんだが――探し物をしてるのである。いや、さがし「物」じゃない。探し「人」なんだ。尋ね人なんだ、つまり。
とは言え、顔を識《し》らない人を、しかも出来るだけ多勢拾い上げて来いというんだから、命令それじしんが何だか私にも一向判然しないけれど、とにかく、ゆうべラ・トトで親分が言うには、「ジョウジや、亜米利加《アメリカ》人かいぎりす[#「いぎりす」に傍点]人が一ばんいい。物欲しそうな面《つら》の、金持ちらしいのがうろうろ[#「うろうろ」に傍点]してたら、こうこうこうし
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