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 ブルヴァル・キャプシンからマデレイヌ、RIVOLIから宮殿広場、オスマンからプラス・ドュラ・コンコルド、シャンゼリゼエから星《エトワアル》、そこの凱旋門から森《ボア》ドュ・ブウロニュの大街――とこう並べ立てると、外国人――ふらんす人以外の――の多くうろうろ[#「うろうろ」に傍点]している巴里《パリー》眼抜きの大通りはたいがい網羅しつくしたようなものだが、これが簡単なようで、いざ実地に足で歩いてみるとなかなかそうでない。まず、リヴォリの「屋根のある歩道」を出はずれてコンコルドへさしかかると、縦横無尽無秩序滅茶苦茶電光石火間一髪と言ったぐあいに、どれもこれも家族の臨床へ急ぐように、眼の色を変え、息を切らした自動車の奔流が前後左右から突進し、驀出《ばくしゅつ》し、急転し、新|巴里《パリー》名所「親不知子不知《おやしらずこしらず》」――もっとも交通巡査だって根気よく捜査すると一人ふたりそこらに居るにはいるんだが、はじめからすっかり降参して、ただ一番安全な安全地帯に立って帳面片手に楽しく鉛筆を舐《な》めてるきりだ。何をしてるのかというと、今かいまかと自動車の衝突するのを待って、事故が起
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