ワたは例の「女の見世物」でも漁《あさ》って歩くか。同じくBON!
 と、そう何でもかんでも善哉《ボン》じゃあ案内役の僕が困るが、いま「女の見世物」ってのが出て来たようだが、じつは、話はこの「女の見世物」と大いに関係があるんで――と言っても、僕がそんなところを君を引きまわすわけじゃないから安心したまえ。それどころか、僕は僕で、ゆうべサミシェルのLA・TOTOでアンリ親分から言いつかった大事な用があるんだ。
 とにかく、おもてへ出よう。
 巴里《パリー》の夜は人の眼を wild にする。君ばかりじゃない。土耳古《トルコ》人もセルビヤ人も諾威《ノウルエー》人も波蘭《ポーランド》人も、ぶらじりあんもタヒチ人も「紳士である」いぎりす人も、「あんまり紳士でない」亜米利加《アメリカ》人も――。
 私の仕事の受持ちは、この英吉利《イギリス》紳士とあめりかのお金持ちなんだが、じゃあ一たいどんな仕事かと言うと――待った!
 今そいつを明かしちまっちゃあ第一親分に済まねえし、それより話にやま[#「やま」に傍点]ってものがなくなる。だから、ここまで来たが最後、嫌《いや》でもおしまいまで読むことだ。

    
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