―。
笑っている巴里。
唄っている巴里。
ちら[#「ちら」に傍点]と洋袴《スカアト》をまくって片眼をつぶっている巴里。
君! 君ならどうする?
まずホテルへ。BON!
そら、タキシだ。手を上げる。
『キャトルヴァンデズヌウフ・アヴェヌウ・ドュ・シャンゼリゼエ――セッサ!』
君の口から生意気な一本調子が自然にすべり出る。ははあ! 君はまだ飲まない葡萄酒《ぶどうしゅ》に酔っているのだ!
ホテルへ荷を下ろす。が、夜とともにいま生き出したばかりの巴里《パリー》が、君を包囲して光ってる、笑っている、唄ってる――ちょいと太股を見せている。
さ、第一に、君はどうする?
グラン・ブウルヴァルへ出かけて歩道の|張出し《タレス》で 〔ape'ritif〕 でも啜《すす》るか。BON!
ジョウジのように洋襟《カラア》をはずし、一ばんきたない服を着て聖ミシェルか Les Halles あたりの酒場《バー》から酒場を一晩うろついてみるか。これもBON!
それとも些《いささ》かの悪心をもって路上に「鶴」――辻君《つじぎみ》のこと。たぶん立って待ってる姿が似てるからだろう――でもからかうか。
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