っている巴里。
唄っている巴里。
ちら[#「ちら」に傍点]と太股《ふともも》を見せて片眼をつぶっている巴里。
EH・BIEN!
MON・PARIS!
――ところで、いつまでもひとりで騒いでいたんじゃあ話が進まないから、いい加減ここらで切り上げて本筋へかかろう。
さて、これが私――ジョウジ・タニイが、幸か不幸か一時ノウトルダムの妖怪になった一JOの物語である。
なんかとこうひとつどかん[#「どかん」に傍点]とおどかしておいて、その君があっ[#「あっ」に傍点]と驚いてる隙に乗じてこの事実奇談《これだけはほんと》を運んで行こうという肚《はら》なんだが、ここに困ったことが出来たというのは、どうも「巴里《パリー》――日本」とこう万里を隔てているんじゃあ何かにつけて不便で仕様がない。で、いろいろと手離せない御用もおありだろうけれど、そこは私に免じて、一つ思い切って君にも巴里へ来てもらうことにする。
嫌《いや》だなんて言ったってもう駄目だ。はなしは早い。君の汽車はいま巴里へ滑り込もうとしている――。
僕が停車場まで迎えに出る。
出来ることなら初夏、もしくは秋の夕ぐれがいい。長い黒
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