の老人がひどく私に make−face のして行った。が、間もなく彼は、そこの角で制服の偉丈夫に掴まってぺこぺこ[#「ぺこぺこ」に傍点]おじぎしている。そんな物を運ぶには裏町を通れ――とでも叱られているものとみえる。制服の偉丈夫なら巡査にきまってるから――。
HAHHAG!
そうすると、空の色をうつして薄ぐらい街路を、真夏の秋風に吹かれて紙屑が走り、空のいろを映してうす暗い顔の北国人が右に左にすれちがい、往《ゆく》さ来るさの車馬と女の頬の農民的な赤さ――この丁抹《デンマーク》的雰囲気のまんなか、正面クリスチャン五世の騎馬像《ヘステン》に病人のような弱々しい陽脚《ひあし》がそそいで、その寒い影のなかで、花屋の老婆が奇体な無関心さで客の老婆に花束を渡している。
What is IT ?
What is THIS ?
What is THAT ?
つねにあまりに空を意識している街――それがこぺんはあげん[#「こぺんはあげん」に傍点]だ。
女の頬の赤さと青年の眼の碧《あお》さと。
農民的な叡智。
旅人はこの可愛い社会に親しみ得る。
絵のない絵本
夕方、当てもなく場
前へ
次へ
全66ページ中9ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
谷 譲次 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング