ば、巷の運河に一〇〇八の灯影がゆらめいて、見慣れない電車に灯がついて走り、タキシの溜りへ旅行者とスウツケイスが殺到し、それを巡査が自信と熟練をもって整理し、柳の幹に寄席の広告が貼られ、その下に恋人を待って女が立ち、橋をゆるがせてトラックが過ぎ、運河の遊覧船からラジオのジャズが漂い、帆柱は交錯し、建築はあくまでも直角に―― Here we are in STOCKHOLM.
三つの王冠
未知の町を掴もうとする場合、最初の方法として一ばんいいのは高いところに上って見おろすことだ。
これに限る。そして、それにはストックホルムは有難いというわけは、ジュルガルデン市街島の丘にスカンセンなる公園兼|屋外博物館《オウプン・エア・ミウゼアム》があって、そこにべらぼうに高いブレダブリクの塔――二四六|呎《フィート》――が立っているから、その頂上へ登るとストックホルムとその近郊は指顧《しこ》のうちだ。
ストックホルムのぷろぐらむからこのスカンセンは省略出来ない。北欧諸国の動植物と民族的記録の実物がここ七十英町の変化に富む地形に集まっていて、ことにヴィスビイ島の模形市街、ラップ族の生活状態な
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