どは学術的にも著名である。出かけるには夕方を選ぶといい。それも、ダンスプランという瑞典《スエーデン》各地方の踊りのある日でなければ駄目だ。この民俗だんすは、女たちが昔ながらのその土地々々の服装をつけて踊るんだから一度は見る必要がある。晩餐はイデュンハレン料理店の戸外《そと》の一卓でしたためること。音楽と夕陽と郷土服の女給たちが、スウェイデン料理とともに一夕の旅愁を慰めるだろう。
こうして陽の沈みかけるのを待って、さ、ブレタブリックの塔へのぼろう。
塔上、北欧のネロを気取る。
「北のヴェニス」は脚下にひろがって、バルチックの入江とマラレンの湖水。みどりの沃野《よくや》にかこまれた「古い近代都市」のところどころに名ある建物がそびえ、水面に小蒸汽がうかび、白亜《はくあ》の道を自動車が辿り、この刹那凝然としているストックホルムのうえに、北の入日は七色の魅魍《みもう》を投げる。
寺院が見える。いくつも見える。そのなかで「瑞典《スエーデン》のパンテオン」と呼ばれる、リダルホルムス教会《キルカ》――|騎士の島《リダルホルムス》という語意だが――この歴代の王様を祀《まつ》ってある壮麗な拝殿の内部
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