てそのポプラと白樺の葉を掻《かい》ている。私達はいつまでもベンチに腰かけていた。
雨後・坂みち・さむぞら――これが私のオスロ風物詩だ。
では、これから陸路|瑞典《スエーデン》へ出て、ストックホルムへ行こう。
というので、オスロ・ストックホルムのあいだに退屈な一日の車窓を持つ。
アモトフォス――イダネ――ファエラス――スクラトコフ――スタフナス――オルメ――スワルタ――ファラ――これがみんな停車場の名。すでに名だけで充分なところへ一々とまって、おまけに長く休むんだからやり切れない。
この間、満目の耕野に灌漑《かんがい》の水の流るるあり。田園の少婦踏切りに群立して手を振るあり。林帯小駅に近く、線路工事の小屋がけの点々として落日にきらめくあり。夕餉《ゆうげ》の支度ならん。はるか樹間《このま》の村屋に炊煙《すいえん》の棚曳《たなび》くあり。紅《べに》がら色の出窓に名も知れざる花の土鉢をならべたる農家あり。丘あり橋あり小学校あり。製材所・変圧所・そして製材所。アンテナ・アンテナ・アンテナ。それらを遠景に牛と豚と牧翁の遊歩するあり――で、ようやくにして宵やみとともにストックホルム市に着け
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