。なぜなら、コペンハアゲンそのものが「こまかい花文字でべったり書かれて、唐草模様《アラベスク》の獣皮の表紙に真鍮の鋲を打ち、ゴセックふうの太い釦金《ぼたん》で綴じてある」一巻の美装史書だからだ。
そして十二世紀! こぺんはあげんは十二世紀に根をおろした市街だ。もっともその後一度火事で大半焼けたけれど。
けれど、私の概念において、この一書はたしかにコペンハアゲンの化身に相違ない。私たちはいつでもその頁を繰って、一枚ごとにまざまざ[#「まざまざ」に傍点]と北のアテネの風物と生活を読むことが出来るだろうから――それは私達にとって絵のない絵本なのだ。いまもこれをところどころくりひろげていこう。
私のコペンハアゲンだ。
ひらく。
第一頁。
|新しい王様の市場《コンゲンス・ニュウトルフ》。馬像《ヘステン》の主クリスチャン五世がつくった広場《プラザ》。そのむこう側のシャアロッテンボルグ宮殿は五世の后《きさき》シャアロット・アメリアの記念。現今は帝室美術館。
第二頁。
美術館に近い広場のはしに帝室劇場。代表的北欧ルネザンス建築。そこの大廊下にあるサラ・ベルナアルの扮したオフィリアの浮彫
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