|をゆるめて場処の観念を明白にしておく必要があると思う。そうしないと、どこで何を騒いでるんだか一向わからないから――そこで、なにを隠そう、この僻村こそは、和蘭《オランダ》ユウトラクト在なになに郡|大字《おおあざ》何とかドュウルンの部落である。
では、一たいどうして私たちが、この何なに郡大字なんとかのドュウルン村へこつぜん[#「こつぜん」に傍点]と姿を現わしたかというと、なにもわざわざ小犬がしっぽ[#「しっぽ」に傍点]――小犬じしんの――に戯れるのを見に来たわけではない。これには一条の立派な理由があるのだ。
知ってる人は知ってるだろう。前|独逸《ドイツ》皇帝ウィルヘルム二世は、いまこのドュウルンの寒村で配所の Moon を見ているのだ。
順序としてそもそも[#「そもそも」に傍点]からはじめる。
そもそも私たちはアムステルダム市にひとりの知友をもつ。ヴァン・ポウル氏と言って船具会社の重役だが、ある日、私たちが通行人のなかから物色して、卒爾《そつじ》ながらと途《みち》を訊いたのがこの親切なヴァン・ポウル氏で、翌日氏は、どこか会社の近処の食料品店で見つけたが、これは日本人の飲料であろう
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