星あかりだ。
あしたの天気は楽観していい。
嘆きの原
|尼院の森《ボア・ドュ・ラ・コム》、ソワアニの森――このソワアニはブラッセルの「ボア・ドュ・ブウロウニュ」だ――とにかく、みどりの反映で自動車内が、乗っている私も彼女も真っ青に見えるほど、いつまでもいつまでも森のなかばかり走ってる。森だからやたらに大木が生えて、その古い大木がまた出鱈目に枝を張って、枝の交錯から午後の陽が洩れて、土と朽葉《くちば》のにおいがつめたく鼻をついて、湖があったり、薪《まき》をしょった女が小路に自動車をよけていたり――そのうちに森を出たと思ったら、いきなり宿場みたいな埃《ほこり》くさい町の真ん中へ停めて、運転手の赤ら顔が私たちを振りかえった。
『あれです! 一八一五年六月十七、十八の両日、ウェリントン将軍の参謀本部となった家《うち》は。いまは村の郵便局ですがね。』
私たちはウォタアルウ古戦場へ行く途中だった。いや、もうここがウォタアルウの町だという。見ると、いかさま「すっかり当時を心得て」いそうな建物が、ふるくて汚いくせに妙に威張って建っている。ここにおいてか私は、
『ははあ、そうかね。大
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