、けっして落ちない――と断言出来ない。しかし、旅客機ならまず九十九パアセントまでは安全だといってよかろう。安全|剃刀《かみそり》の安全なるがごとく、それは日常的に安全なのだ。』
『そうかなあ。けど九十九パアセントってのがどうも気になるね。あとの一パアセントはいったい何だい?』
『それは何かの故障・錯誤・違算――きっと今までの飛行術の知らなかった、ぜんぜん新しい、ほんの針のさきみたいに小さな誤謬の突発可能性さ。それでも空中では優《まさ》に致命的であり得るにきまってるからね。とにかく万能にほど遠い人間が、特定の一目的のほかは何らの用をなさない機械なるものをあやつって高くたかく地を離れるのだから、そりゃあ君、比較的危険率――それとも不安率と言い直そうか――の多い理窟じゃないか。』と。
つねに冷淡な常識は、ここで私を突っぱなしてしまう。BUMP!
自殺的行為――墜落中の心理――その感情・光景――新聞記事――それらが私にじつに如実に想描される。
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「I・Aの旅客機墜落
大木を打って一同惨死
不運の乗客中に日本人夫婦」
[#ここで字下げ終わり]
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