e`s chic !〕 あるとら・もだあん! 私たちが、たしかに生きている証拠にじぶん達のなま[#「なま」に傍点]の神経をぎりぎり[#「ぎりぎり」に傍点]痛感する歓喜の頂天は、まさに空の旅行の提供する thrills につきると言わなければなるまい。なぜならそれは、この速力狂想時代の尖鋭、触角、突線、何でもいい、世紀の感激そのものであり、たましいを奥歯に噛みしめて味わう場合だからだ――というんで、ちょいと巴里《パリー》まで、なんかと、まあただ「人のする飛行なるものをわれもしてみんとて」、こんにちここにぶらりと立ちあらわれた私達である。
 が、BUMP!
 このチャアルス街|空中館《エア・ハウス》、飛行旅客の待合室へ踏みこんだ刹那、ひとつの正直な反省的|心状《ムウド》が、電波のように私の全身を走り過ぎたことを私は告白しなければならない。
 もっとも超特近代的に無頼であるべき瞬間に、不必要な「|冷たい足《コウルド・フィート》」が私達をとらえたのだ。懐疑――自己保証――そして again 懐疑。
 ここにおいて私と私の常識が押問答をはじめる。
『飛行機というものは絶対に落ちないか。』
『勿論
前へ 次へ
全66ページ中4ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
谷 譲次 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング