れ飛び、蠅の羽に陽が光って、川づらの工作船が鈍いうなり声をあげるいいお天気だ。
『大丈夫ね、この調子なら。』
ちょっと立ちどまった彼女が、こうかすかな声を発する。
『うん。しかし、それあ判らないさ。』私の眼はいささか意地わるく笑っていたに相違ない。『何と言ったって人間のすることだから。』
『あら! だって、こんなしずかな日。風はなし――。』
なんかと、私と彼女のあいだに、けさからもう何度となく繰り返された会話の反覆がまたしばしつづいたのち、ただちにふたりは敢然と民族的威容をととのえてその建物の内部へ進入した。
とまあ、思いたまえ。
BUMP!
いうまでもなく、チャアルス街とリジェント街の角は、帝国空路会社《インピリアル・エアウェイ》の倫敦《ロンドン》における「|空の家《エア・ハウス》」、いわば空の旅客の集合場である。|空の事務所《エア・オフィス》なのだ。
Oh ! The Air House !
なんとこの新語の有《も》つ科学的夢幻派の|色あい《ヌアンス》――十年まえそも地球上の誰がこんな言葉を考え得たろう?――その超近代さ、自然への挑戦! CHIC! CHIC! 〔Tr
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