ッればならない。で、お婆さんは新聞をたたみ、男はねくたい[#「ねくたい」に傍点]へ手をやり、女は一せいにバッグをあけて鼻のあたまを叩き出す。
BUMP!
BUMP!
BUMP!
なつかしい地面が見るみる眼下に迫ってきている。世の中のにおい・石ころ・土・草の葉――色のくろい操縦者の横顔が笑う。下の仏蘭西《フランス》の格納庫員へ手をあげて――。
彼女から私への最後の筆談。
『ヒコウカニナリタイ。』
都会の顔
ちょうどいつか。そしてどこかですれ違った通行人のなかに、性格的な人の顔が何ということなしに長く頭にこびりついていて、それがときどき訳もなくふっ[#「ふっ」に傍点]と思い出されるようなことがあるのとおなじに、旅にも、何ら特別の意味もないのに、どういうものかいつまでも忘れられない不思議な小都会というのがある。
それはなにも、その町の有《も》つゴセック建築の伽藍《がらん》でもなければ、おれんじ色の照明にウォルツの流れる大ホテルの舞踏場でもない。さらにベデカに特筆大書してある「最新流行」の産地たる散歩街や、歴史的由緒のふかい広場や、文豪の家や博物館では決してない。では何
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