て両手をこすろう――。
 悪魔だ。
 BUMP! そして Rolling。
 機は「無」のなかを一路駈け上っている。太陽をめざし、神を望んで。
 〔Bapte^me de L'Air !〕
 大きな赤い屋根、頭からすぐ脚の生えている人間たち、一枚二枚と数えられる自動車――どうしてこの町はこう平べったいんだろう?
 や! 丸い穴、四角い穴、何だ、煙突だ。やあ、テニスしてらあ! 馬鹿だなあ、よして上を見てらあ。顔が靴をはいてるぞ! やあい、手なんか翳《かざ》すない!
 きちょうめんに長方形なテニス・コウトとその附近がむらさき色に澱《よど》んで見える。飛行機の影が落ちているのだ。
 BUMP!
 すでに高度は千|米《メートル》以上。百|米《メートル》の速力。これから千乃至五千の高さを揺曳《ようえい》して飛ぶ。一分間に汽車の窓から見る視野の二十倍が一秒のあいだに私たちのまえ――いや、下にあるわけで、機の真下の一地点だけでも、まさに六|哩《マイル》平方にあたる勘定だ。
 もう疾《と》うにクロイドンを飛び出したのだろう。人家がまばらになって、バリカンのあとみたいな耕地がGrrrrと斜めにゆるくうし
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