つみ》とボウイさんとの。
 はっはっはっは!
 ほう・ほう・ほ!
 声は掻《か》き消されて聞えないが、乗客は誰もかれも大きな口をあけて笑っている。皆げらげら[#「げらげら」に傍点]笑ってる。何だか無性におかしいのだ。きょうから新しい生命《いのち》を貰って、全くべつの動物になった気がする。それが可笑《おか》しくておかしくてたまらない。赤んぼのような根拠のないうれしさだ。
 私も笑う。うんと、うんと、笑ってやれ。
 で、あははははは!
 HO・HO・HO!
 が、機が飛行場《エロドロウム》を驀出《ばくしゅつ》して、すぐそばのアパアトメントの中層とすれすれに飛び、あけはなした窓をとおして一家庭の寝台、絨毯、机、そのうえの本、ちょうど戸《ドア》を押して這入ってきた女、それらが大きく大きく――実際よりずっ[#「ずっ」に傍点]と大きく――あざやかに閃過《フラッシ》したとき、私はふっと悪魔になった気がした。
 そうだ。けさテムズの岸で馬にからかっていた蠅。私はいまあの一匹に化けているのだ。
 だからぶうん[#「ぶうん」に傍点]とこの窓枠へ飛び下りて、それから机、書物と順々にとまって、そこで首をかしげ
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