時間飛行のため建造《つく》られ、キャビンの通風|煖※[#「火+房」、210−14]《だんぼう》照明等すべて最も近代的デザインになる。
 中央エンジンの後部は防火壁にして、石油は上翼下二個のタンク内に貯蔵さる。
 本機の最大速力は一時間百|哩《マイル》以上。
 満載時の重量は約七|噸《トン》半なり。」
[#ここで字下げ終わり]
 こう一気に読みおわった私は、あわてて綿を千切《ちぎ》って耳へ詰めながら見まわすと、なるほどみんな耳の穴を白くふさいでいる。
 BUMP!
 と、風をついて滑走《タクシ》していた機が――じっさいいつからともなく――ふわりと宙乗りをはじめたらしい。いままで機窓の直ぐそとにあった地面がどんどん下へ沈みつつある。
 天文とジュラルミンと大胆細心と石油の共同作業は、ここに開始された。
 飛び出したのだ。
 Off she goes ―― The Silver Wing !
 OH! Glory ! 何という刹那的な煽情《センセイション》! 刺激・陶酔・優超感・魘《うな》されるこころ――このGRRRRと、そしてBUMP!
 生きながらの昇天だ。人と鞄と旅行免状とランチ包《づ
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