じめている淡灰色の莫大な妖怪が、前世界の動物のような筋骨だらけの身体《からだ》をジェリイみたいにこまかくふるわせて、おとなしく私たちの眼前にある。
定期旅客機「銀のつばさ」である。なんと雲に擦《す》り切れ、空によごれたそのすがたの頼母《たのも》しく見えたことよ!
あんなに積んで飛べるかしらと思うほど、客ぜんたいのトランクやらスウツケイスやら鞄やを山のように機の一部へ押しこんでいる。
広場のせいか、飛行場へ行ってみると風がある。帽子の吹きとばされそうな強さだ。
『あら! ひどい風ね。』
『こうなると運を天にまかせるんだね、文字どおり。』
見送り人の一団が遠くに――こわいとみえてそばへは来ないで――かたまって、やたらに手をふったりカメラを向けたりしている。このところちょっと「生きては再び地を踏まず」といった感慨が私たちを東洋的に昂然とさせる。言われるまま機のまえに並んでミス・ノリスのれんず[#「れんず」に傍点]へ社交用微笑を送りこんだのち、車掌――じゃない、機掌だ――に急《せ》き立てられて、他の乗客とともにどやどや[#「どやどや」に傍点]と階段をのぼって機の横腹《よこっぱら》に開い
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