うだい、胸騒ぎはやまったかい。』
 安心立命!
 安心立命!
 あん・しん・りつ・めい!
 そのうちに新開地のクロイドンの「|空の港《エア・ポウト》」だ。飛行場《エロドロウム》だ。巨大な建物。壮麗な新築飛行ホテル。整然たる発着所。待合室。絵葉書たばこ類売場。食堂。化粧室。乗客と見送人の雑沓。ふたたび旅券検査。私たちにもバアンス夫人の一家と、妻のあそび友達ミス・ノリスとが早くから見送りに来ている。
『ほんとにいいお天気――。』
『大丈夫ですわね、この分なら。』
『ええ。こんなしずかな日。風はなし――。』
 じ・じ・じ・じい――呼鈴《ベル》。
『巴里《パリー》行き! 巴里ゆき!』
 これで、ぞろぞろ野原へ吐き出される。
 茫漠たる青ぐさの展開しばらく踏みおさめの土。
 あ! ならんでる、並んでる! 地に翼をおろして!
 飛行機・複葉・とんぼ・無数の水々しい飛行機――新鮮な果実のような、悪戯心に満ちた反撥と弾力をじっと押さえて、OH! お前たちはいま乗るべき微風を待っているのか。
 引力の反逆者よ!
 思うさま地を蹴れ!

   雲を駈る悪魔

 GRRRR――。
 すでにプロペラの廻転をは
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