当《ランチ》の御用――ランチはいかが?』
よって機上で消費すべく二人前のランチを命じ、代金を払って受取りがわりの切符を貰う。これを飛行機のなかで呈示してランチ包《づつみ》と交換するのだ。
そばで品のいい英吉利《イギリス》の若奥さんが何国《どこ》かのお婆さんとさかんにおしゃべりしている。
『はあ。ちょっと巴里《パリー》まで。』
奥さんの宣言である。このお婆さんも乗客とみえていささか心配そうに、
『大丈夫でございましょうねえ今日なんか――こんなしずかな日。風はなし――。』
『あたくしなんか随分みなからおどかされましたけれど、でも、この頃ではどんなに風が吹きましても平気だそうでございますよ。』自信あるもののごとく奥さんはつづける。『何でも出発のまえの晩は総がかりで徹夜して、エンジンから機体からすっかり検査してこれでいいとならなければ、決して飛ばないんだそうでございますよ。けれど、なにしろ人間のすることで御座いますから――。』
『ほんとにねえ。』
やがて、自動車の出る合図。
空の旅人を満載した二台の大きな車が、日光・無風・暑熱の場末をクロイドンへ――。
車中、じぶんへの私語。
『ど
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