e party I want is Mr. ラックテロ・アイチミュウラ。
Now, don't say you don't know him !』
『MR・R・アイチミュウラ、え?』
とサンスクリットの呪文を唱えるように口中に繰りかえしながら、「羽左衛門」を知らないほど間の抜けた彼の顔にも、漸時に了解の情がそれこそ倫敦《ロンドン》のしののめ[#「しののめ」に傍点]のように拡がってきて、
『|乞う待て《プリイズ・ウエイト》。』
なんかと仔細らしく指を上げてみせたのち、宿帳のところへ行って暫らく頁をめくっていたが、やがてのことに発見の喜悦とともに、
『おお! ミスタ・アイチミュラ、いええす、居ます、たしかにそういう名の人が泊っています――が、今は? と。さあ、お部屋にいますかどうか――。』
というわけで、ようよう電話で羽左衛門の在室を突きとめ、それっ! とばかりにこうして昇降機上の人となってきた六階の六三七号室である。
ノック。開扉《かいひ》。侵入。来意。
『どうぞちょっとお待ち下さい。いまちょうどひげ[#「ひげ」に傍点]を剃っておりますから。』
という東道《とうどう》役のことばに
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