Aとにかくみんな固唾《かたず》を呑んでいる。さきに言うのを忘れたが、俄雨《にわかあめ》に降られて私たちの逃げこんだ常設館ニュウ・ギャラリイのスクリインに、ショウの「|物を云う映画《テレヴィジョン》」がうつっているのだ。
私たちは知らずに飛び込んだのだが、このショウの「話す実写」はじつにライフ・ライクで、倫敦《ロンドン》じゅう大評判だった。そのためこのとおりの満員である。
翌日。
これに刺激されて、私と彼女はホワイト・ホオル四番にタキシを駆った。ホワイト・ホウル四番館は、倫敦市におけるショウの文筆事務所のある、最高級の宏壮なアパアトメントだ。
ところが、G・B・Sはすでに、遠く南フランスに最近新築した別荘へ避暑に去ったあとだった。
底本:「踊る地平線(上)」岩波文庫、岩波書店
1999(平成11)年10月15日第1刷発行
底本の親本:「一人三人全集 第十五巻」新潮社
1934(昭和9)年発行
※底本には、「新潮社刊の一人三人全集第十五巻『踊る地平線』を用いた。初出誌および他の版本も参照した。」とある。
入力:tatsuki
校正:米田進
2002年12月9日作成
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