ヨ行ってみると、這入った拍子に、ひとりの色の黒い小さな青年が、ぴょこりと椅子を立っておじぎをした。それが小野さんだった。
『やあ! どうですな、このうちの待遇は? お手紙で見るとあんまり感心しないようですが――。』
ちょっと挨拶がすむと、小野さんはもうじろじろ[#「じろじろ」に傍点]そこらを見まわしている。ベントレイ婆さんは心配そうに小野さんの視線を追いながら、しきりに表情で私に推薦をうながす。が、その哀願を完全に無視して、こうなれば私も日本語だ。
『失礼な手紙をさし上げましたが、どうもこのお婆さんが書け書けといってきかないもんですから――駄目ですよ、こんな家《うち》。なっちゃあいないんです。』
『そうですか。この婆さんはまた無理なことを言いそうなやつですね。白紙やるから文と読め、ですか。はははは、が、白紙じゃあまた承知しますまいしね。それでもこいつ[#「こいつ」に傍点]喜んでたでしょう? てんで何が書いてあるか解らないんだから。』
ここに到ってか、てんで何を言い合ってるんだかわからないもんだから、お婆さんは一そういらいら[#「いらいら」に傍点]してくる。それでも、社交性のために表
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