桝R人に、ことに必要に迫られている同国人に、その満足をしらせて幾分でも分けてやりたいとは思いませんか。』
どうも呆れたものだ――むこう側からヴァレイ夫人が早口にいう。
『書いてやったらいいじゃありませんか。何でもいいから。』
私はベントレイ老夫人に直面して、
『しかし、僕は日本人だから英語じゃ書けない。日本語でいいなら大いにこの家を褒《ほ》めて書こう。』
するとお婆さんが微笑した。日本語でさしつかえないというのだ。
これで助かった私は、そこで、ペンを執ってすらすら[#「すらすら」に傍点]とこういう一文を草したのである。
[#ここから2字下げ]
「宿の主婦があなたの広告を見て、推薦状を書けといってききません。仕方がないのでこうして書き出しましたが、これは決して推薦状ではありません。私も近日移ろうと思っているくらいですから――どっかにいい家はないでしょうか。」
[#ここで字下げ終わり]
そして、こんな手紙に名前は書けないから、と言ってこのままでは署名がないじゃないかとお婆さんが承知しないにきまっているから、おしまいの下のほうへ「早々敬具」とくっつけて、これが私の日本名だと指したら
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