uちらりちらり」に傍点]と見ないようにして見る。そこを、子供は子供だけにおおびらにやるだけなのだ。
なんかと、下宿の不平からはじまって私たちが全英国のあらゆる事物に反感を抱き、ことあらば今日にも爆発してやろうと手ぐすね引いている最中――小野さんなる人物はここへはじめて出てくる。
ある日の朝、ベントレイ婆さんがいつになくにこにこして私たちの部屋へ来た。手に新聞を持っている。読んでみろというから読んでみる。と――。
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「下宿を求むる一日本紳士」
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というのが標題で、広告欄につぎのような文章が掲載してある。その近処にだけ出る小さな区域新聞《デストリクト・ペイパア》だった。
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「ここに一人の年若き日本紳士あり。ロンドンの西南に当り、家族的好感の下宿をもとむ。紳士は独立の事業家にして良き地位を占め、かつ寝室居間食事に対して週二|磅《ポンド》半を最も快く支払うべく、その準備全くととのいおるものなり。うんぬん。」
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『ふうむ。』
私が感心したのを見すまして、ベントレイお婆さんははじめる。
『ああ! わ
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