アのこんとん[#「こんとん」に傍点]たる模型日本の環境のなかから、外部に拡がるろんどんの世界をうかがっていると、そのあまりに浮き立っている独自性が頭から私をとらえて、一種異様な気もちが雲のように覆いかぶさってくるのを意識する。
日本! 日本! 東の海のはてに何から何まですっかり他と異った社会と生活を保持している日本! 変っていることは何かを意味しなければならない。この、変りすぎるくらい変っている日本こそは、その、こんなにかわっているところから見ても、たしかに世界の人類にひとつの使命をもたらそうとしている種子《たね》――種子《たね》だから形は小さい。が、それだけ包蔵する力は大きい――に相違ない、と。
これは決して単なる安価な愛国的感傷でもなければ、珍しくしこたま[#「しこたま」に傍点]日本料理をつめこんだために急に気が強くなっての言でもない。じっさい、こうやってあちこち動いて国と山と人を見ればみるほど、日本人ほど深い感情、高いこころもちに生きている人間は、どこの野、どこの谷にも棲息していないことを私は一そう確めるばかりだ。
旅は驚異を求めて絶えず前進をうながす。が、その旅の提供し得
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