hア》を発見してぎょっ[#「ぎょっ」に傍点]と――その最も不用意な瞬間に――することであろう。
デンマアク街]番――上に、SAKURAと金文字が読める。
日本御料理「さくら」のまえに、私たちはいま立っているのだ。
想像をも許さない「東洋神秘の扉」――それが現実にこうして倫敦《ロンドン》の一横町へむかって、冒険心に富む全市民のまえにひらいているのである。
さくら――Ah, Yes ! Just off Charing Cross !
日本の「口」のオアシス。
日本旅人のらんで※[#濁点付き平仮名う、1−4−84]う[#「らんで※[#濁点付き平仮名う、1−4−84]う」に傍点]だ。
何という民族的に礼讃すべき存在であろう!――なんかと、いくら私ひとりでさわいでも、日本にいる日本の人には何だか一こう訳がわからないかも知れない。が、解らなくても構わない。とにかく、ロンドンへ着いた日本人のほとんど全部が、この戸へ面したとき、やっとのことで一つの望みへ辿《たど》りつき得た大きな喜悦を、その涙ぐんだ溜息によって表現するのだとだけ言っておこう。
「ああ――!」と。
そして、もう一つ、も
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