Cへ水をつぐやつがあるものか。知らないよそんなこと。』
『だって、変じゃあありませんか――。』
『変だとも――大いにへん[#「へん」に傍点]だとも!』
おなじことを繰り返しながら、私たちはいつまでも両方から靴を覗きこんでいるだけだった。
『ほんとにただの水でしょうか?』
しばらくして彼女が言った。私は鼻を近づけてにおいを嗅《か》いでみた。無臭だ。やはり、水はただの水らしい。が、そのただの水が、どうしてこの部屋のこの靴の片っぽにこんなにあふれんばかりに存在することになったのか?――私は、反射的に仰向《あおむ》いて真上の天井を見た。雨漏りというようなことを瞬間私は想像したのだが、言うまでもなく、天井には隙間はおろか汚点ひとつなく、第一、ここは二階で、うえにもう一つ三階があるのだし、それに、私は何という馬鹿だったろう、きょうすこしも雨の降らなかったことは、誰よりも、一日外出していた私が承知しなければならないはずだった。また事実珍らしくいいお天気だったからこそ、私たちもこうして朝から夕方まで歩きまわったわけだった。
『不思議だなあ。』
『妙なことがあるものですわね――おかみさんが間違って水
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