ネってしまうし――とにかく欧羅巴《ヨーロッパ》へ行きつくまで何とかして露命をつなぎ、せめては餓死しない算段を上分別とする。身ごしらえ――喧嘩|乃至《ないし》は火事見舞の支度がいい。金銭――については両替、出入国、相場に関して流言|蜚語《ひご》真に区々まちまち、よろしく上手に立ちまわること肝要、とだけいっておこう。何せ相手は露西亜《ロシア》だ。朝と晩でもう法律が変っているんだから仕方がない。
第三章。車内「これだけは心得おくべし」。
停車時間を見るには時計よりも暦のほうが便利なこと。
そうかと思うと気まぐれに直《す》ぐ出るから、合図の鐘が鳴ったから逸早く駈け込むこと。
つねににこにこ[#「にこにこ」に傍点]して、殊に露西亜人のボーイには必要以上の好意を示すこと。
神仏どっちでもいいから、絶えず安着を祈ること。
知っていていい露西亜語。
こは何なりや――シト・エト・タコエ?
こはいずくの停車場なりや――カカヤ・エト・スタンツィオ?
ハム――ウェッチイナ。
バタ――マスロ。
幾金なりや――スコリコ?
自余は手まねと表情。悪口には母国語使用のこと。
以上、新刊しべりあ
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