Iビ河。シベリア革命委員会。駅の売店で果物だけは買うべからず。オレンジ一個七十|哥《カペイカ》して、よほどの好運児のみが食べられるのに当る。
 バルナウル――羊皮外套《バルナウルカ》。
 セミパラチンスク――イルトゥイシ河沿岸。キルギス人多し。金に光る回々《フイフイ》教寺院の月章。砂ぶかい大通り。駱駝《らくだ》のむれ。三角の毛皮帽をかぶったキルギス族遊牧の民。カザクスタン共和国の、クリイム。
 オムスク――むかしシベリア政庁のあったところ。車や家のこわれたのがあちこちに見える、革命のあとだ。空は秋の色をしている。
 チュウメン――トウラ河。チュウメン絨毯。土、日ごとに黒くなり、人、日ごとに白くなり、このあたりよりようやく欧露に入る。
 スウェルドロフスク――もとのエカテリンブルグだ。ニコライ二世はじめロマノフ一家が殺された町である。宝石アレキサンドリアを売っている。皇帝の泪《なみだ》が凝り固まっているようで、淋しい石だ。ウラルの風。
 ペルミ――黒い低い街。
 ヴィヤットカ――おなじく黒く低い街。白樺細工の巻煙草箱一|留《ルーブル》五十|哥《カペイカ》より。みんな買う。私も買う。
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