燒髓のせいだろう。それでも国境駅だけあって薄ぼんやりした電灯に非常に重大な気分が漂っている。税関検査。案ずるより生むがやすい。
 マツェフスカヤ――町も私も眠っていた。
 カリムスカヤ――オノン河の鉄橋。
 チタ――人口八万。停車場と銀行と学校と博物館とホテルあり。臭い群集。
 ウェルフネウジンスク――一度で言えたら豪《えら》い。セレンガ河の岸。ブリヤアト・モンゴウル・ソヴィエトの首府。東洋と西洋の奇妙なカクテルがぷんぷん香《にお》っている。
 スリュジャンカ――小駅。バイカル湖風景車窓に展開し出す。
 バイカル――四十六の隧道《とんねる》。水色美とハヒルスという魚を自慢にしている。アンガラ河。
 イルクウツク――砂金。ヤクウツクとかへ行く道だそうだが、そんなことはどうでもいい。とにかく学校と銀行と市場と博物館とホテル。OH! それに劇場がある! やはり、皮くさい男と女と子供。
 クラスノヤルスク――エニセイ河。豚の毛の集散地。人もかなり住んでる。
 アウチンスク――白樺にかこまれた町。
 タイガ――これも白樺にかこまれた町。
 ノウォシビルスク――満洲里《マンチュリー》から五日目。
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