い込んで)これからすぐ南へ発って――。
安重根 (別人のように活気を呈している)そうだ! 三夾河まで行こう! ハルビンで決行する方が都合がいいか、他の停車場へ行ってやるのがいいか、単に視察のつもりでも無意味じゃないぞ。
禹徳淳 どうせ明日一日ここにぶらぶらしていたってしようがない。
安重根 それにハルビンは軍隊が多いし、いざとなると近づけないかもしれない。ことにココフツォフも来ている。警戒は倍に厳重なわけだ。
  曹道先を案内に劉東夏が駈け上って来る。
劉東夏 (息を切らして)蔡家溝《さいかこう》で三十分停車するそうです! はっきりわかりました。この先の蔡家溝です。あすこだけ複線になっているので、臨時列車なんか三十分以上停車するかもしれないと言うんです!
安重根 (きびきびした口調)護照のほうはどうだ。大丈夫か。
禹徳淳 東夏君にすっかりやってもらってある。
安重根 汽車はまだあるな。
劉東夏 急げば間に合います。
禹徳淳 蔡家溝までか。
安重根 馬鹿言え。どうなるかわからない。三夾河まで買わせろ。
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と先に立って急ぎ物乾しを降りかける。
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